対談の最後は二上社長と桜花代表による首脳会談で締めくくりたい。
大田区のビッグマッチ開催に至ったきっかけから現在でのビジョン、また10周年ということで旗揚げ時の苦労話など多岐にわたって聞いた。
そして最後にはサプライズなトークまで飛び出した!?
撮影=入江寛人 取材・文=泉井弘之介
――まず10周年を大田区で開催するきっかけはなんだったんですか。
二上 私が言い出したなあー。
桜花 そうです、私は全くやったことがないんです。でもGAMIさんがプロレスの聖地が大田区だからと、
二上 いや、女子プロの聖地やねん。だって私がはじめて買ったクラッシュギャルズのレコードは、大田区の実況中継レコードやねん。LP版やで、LPやで。
(新日本は昭和47年3月6日旗揚げ。写真は当日の控室の様子と引退していた豊登にカムバックを依頼するA猪木。今の新日本があるのもすべてはここからはじまった。)
桜花 レコードですか、音しか聞こえないですよ。
二上 音しかないよ、だってビデオがベータ版の時代やもん、あんた何言うてんアホちゃう?
桜花 え? それ聞いて何がわかるんですか?
二上 そのときの臨場感。
桜花 「おーっと、投げた―!」みたいのですか。
二上 そう、それで、長与さんがダンプさんに「もう一回やらせろ、もう一回」みたいなの言ってて、すげーなーって思ったら大阪って女子プロ中継がサンテレビ(神戸を拠点に持つ関西UHF局)やねんか。それが二か月遅れくらいで放送あんねん、それでやっと映像で見れてん。これこれレコードレコードレコードって。
――そのレコードの役割は大きですね(笑)。
二上 みんな武道館とか両国とか言うやん。でもあんまり両国とかのほうがピンとけえへんねんなー。
桜花 私は横浜文体とか川崎市体育館のほうがしっくりきますね。やったことあるんで。そっちのほうが大場所ってイメージになりますね。
二上 いや、大田区。だって新日本旗揚げやで。原点やで、プロレスの。何言ってんのアンタ!
桜花 この間、大田区まで二人で見に行ったんです、下見に。GAMIさん、めっちゃ興奮してました。
二上 私、初めて大田区でやったのがジャパン女子のときの小林とかいう子。なんやったかなー名前。のちにJWP入った子(小林美津恵=引退)。
――また古い記憶ですねー。ではGAMIさんは何試合か試合してるんですね。
二上 そう、やってるやってる。文子とシングルでやってるもん、タイトルマッチで。で、昔の大田区ってすっごい暑かってん。自分でドラえもんのちっちゃい扇風機とか持っていってたもん。トイレも和式やったし。昔の『ファイトクラブ』に出てきそうな狭くて汚い通路通って。今は全然違うもん、びっくりした。
桜花 本当きれいで。すっごい明るいですよねー、でも私は大きな会場ではやったことあるんですけど、自分のとこで、4000人以上入るとこでやることになるなんてすっごいビビりました(笑)。周りからも「すごいね、よくチャレンジするね」って言われました。
――二上さんの言う通り、女子プロレスの聖地って表現に偽りはないですよね、長与千種さんがWWWA王座を獲得したのも大田区でした。
二上 あとねえ、遠藤美月のデビュー戦も大田区。私が相手ですから。
昔は大場所って言ったら大田区やってん、ホールの次は大田区やってん。
桜花 それはいつの時代ですか。
二上 20年くらい前。
桜花 まだやってないですね、プロレス。私は前の大田区を知らないんです。それでGAMIさんがホームページ上にバナーを作ってたんです。
古い大田区と新しい大田区をコラボしたバナーを。「これは何なんですか、この建物は」って聞きました。
二上 ちゃんときれいにつなぎ合わせてセピア色にしたのに、「なんですかこれ」って。時間返せって思うわ、ホンマ。
桜花 でも、私が知らないってことはうちの選手はほとんど大田区を知らないってことですよね。That’s(長与千種興行)で出たことある人があるくらいで。
女子プロレスの古い記憶では全女が初めて外国人をまねいた大会が旗揚げ年の昭和43年9月1日、「世界チャンピオンシリーズ」開幕戦。
――今度の大田区体育館はどれくらいの収容になるんですかね。
二上 4800人って言ってた。でも、北側をつぶして入場ゲートとかも作るんで4000人くらいかな。
桜花 そうですね、花道ほしいですね。やっぱり入場するとき、気持ちいいんですよ、今なかなか花道ないですからね。この間OZの文体でありましたけど、大場所って気持ちの持ち方も変わってくるんですよ。
――花道以外でも舞台演出でイメージしているものってありますか?
二上 いや、シンプルにします。OZさんの文体終わった時に、ファンの人からのツイッターで、「OZの文体を見てWAVEの大田区の舞台演出が気になってきた」って書かれてたんやけど、舞台に凝りすぎたら試合に集中できへんから一回、シンプルに。ワハハ本舗なんか呼ばれへんし、ダイナマイト爆発もできひんし。でもあのプシャーはやりたいけど。バズーカはやりたいけど、でも、あのプシャーのなかに当たり券とかいれれるんやって。何でも入れれるらしい。それでうち、テレビ系とか強い人多いじゃないですか。そこはいろんな人を頼ってやろうかな。
――映像についてはどうですか。
二上 V★パラのえらい人が「生中継やりたい」って言ってたので、それは一回やってみてもいいかなっていう気もするんですけど、何事にもお金がかかるから。
――チケットの販売もまだこれからになるわけですが、単純に後楽園ホールの2.5倍くらいのキャパになるんですよね。
二上 チケット屋さんも見積もり凄い取りましたよ。だって4000枚じゃないですか。うち今まではんこの手押しやないですか。あれはさすがに辞めようと。どこがいいやろうって見積もり取って、グッズは何を出そうとか。広告宣伝どうやってうとうとか。でもいろんな人が協力してくれるんで。
――それで発表したのが新木場9連戦最終日でした。1年前の発表でしたね。
桜花 あの発表の二日前に「取れました」って連絡が来たんです。
二上 それで早めに発表して、そっから盛りあがりましょう、そしたらみんなが大田区に向くようになるしね、選手もファンもマスコミも。それで取れた瞬間に各団体に「絶対被せないでくださいね」って連絡したし。それで11日がJWPの後楽園で13日がスターダムの後楽園なんですよ。でもお盆の最後のほうやから、11日なんか休みのほうじゃないですか。そしたらここに合わせて全国から女子プロレスを見に来るような形を作ったらみんなが客の取り合いをしなくていいわけやから。でもホンマに大田区やりました、でも300人でした、やったら私も考えるけど、そこそこ入っていけるなって思ったら毎年やりたい。そしたら1年の目標になるわけやから、次から大田区のメインに立つのはだれかってなるわけやし。
桜花 でも、やるのは簡単だけど、やり遂げるのは大変だから…。でも無謀なことに何度もチャレンジしてますよね。新木場9連戦もやったし、24時間もやったり。終わってからあるのは達成感だけですよ。途中やばいなって思う時もある、準備に追われすぎて寝れないし。
――確かに無謀なチャレンジを続けてきたわけですからね。さて、大田区では、全部で何試合くらいにしたいですか。
二上 まあ、10周年なんで、10試合くらい組んで10通りのお話があればいいかなって。でもウチ普通にホールも8試合とかやし。この間6試合にしてみたいんですよ、そしたら、なんとなく試合的にダラけて見えたんで。うちはショートスパンがいいなって。今はそれに選手が慣れてきてるよね。ウチは15分とかやから。その時間内に勝負をつけなさいっていう。
桜花 ウチ45分とか60分ってないんですよ、普通はシングル15分、タッグは20分だし。そう決めているんでその時間の中で勝負を決めてくださいっていう。レジーナも30分ですし。
――ほかにやりたいことの願望なり、アイデアってありますか?
二上 ボブサップ出したいなあ(笑)。ずーと言うてんねんなこれ。ずーと。
後藤対ボブサップ(笑)。
桜花 後藤、美味しいなあ。そこまで成長してくれてたらいいけど。
――でもこういうときに男子がいると、幅が広がりますね。
二上 そうなんですよ、男子部は今地方に行けばご当地団体があるから、そこを頼っていくじゃないですか。そこに男子レスラーを出すんで、と言ったらチケットとか営業もやってくれはるし、効果が違う、集客も違うし。女子のなかに提供試合1試合入れるより、うちの選手とやってもらったほうがええわけやから。あとは男の子いてるほうがいいよ。いくら私が強いとはいえ、所詮女の子やから。石黒(レフェリー)が入って変わったところもあるし、あとは後藤も若いけど男の子やから全然違う。
桜花 でもウチに入ってくるこって物腰が柔らかいんですよ、女っぽくなる。男を出していくと女のほうが口は強いし、だから柔らかく女の子を扱おうって感じで石黒も後藤もやわらかい。オラオラ系はいないんですよウチって。
――桜花さんは選手としてやってみたいカードは?
桜花 やっぱりレジーナを取り戻してここでやりたいなって。いまこの時点ではNEXTというチャンスがあるので、そこで優勝して年末に返り咲いて、来年の大田区まで持ち続けるという目標があるのでそれに向かっていきたいなと。チャンピオンで大田区に立ちたい。
――二上さんは?
二上 私長与千種さんとエキビジョンマッチやりたい。いつそれを言おうかなーと思って。長与さんだけ試合で触ったことないねん。テレビで見てた時に憧れた人は一通りやってんけど、長与さんだけないねん。飛鳥さんあって、ダンプさんあって、ジャガーさんあって、デビルさんあって、ノリさんあって、五紀さんあって。でも長与さんだけがない!
桜花 ダメですよ、やったら。
白の王者・長与千種と赤の王者・大森ゆかりはダブルタイトルを賭けて昭和62年10月20日に対決。“壇ノ浦の合戦”と呼ばれ長与が勝ち二冠王に。
――でもやったら話題になりそうですけどね。
二上 そうですよね、ボブサップがいて長与千種がいて。
桜花 だったら私がやります。私もやったことないし。
二上 なんでお前がやんねん。別に憧れたわけでもないやろ。
桜花 何にもないけど、でもやってみたい。一本目でそれやって、メインでもやると。
二上 2試合もやらせへんわ。
――ではその行方にも注目します(笑)。それで、旗揚げ時っていうのはWAVEが10年持つっていうのは想像できました?
二上 私、今までいた団体が全部5年スパンなんですよ。ジャパン女子5年で終わったでしょ、LL5年で抜けたでしょ、ある紫苑5年で終わったでしょ、ATOZしょぼいから2年で抜けたけど、その後フリーを2年やってWAVEをスタートさせたから、とりあえず目標5年に置いた。5年経ったときに「アルシオン抜いた」って思って、結構達成感あって、5大会とかやったなあ。
桜花 ありましたねー、ゴーゴーカレーマンとか出てきて。
二上 5周年終わったときに夏とか山下が生え抜きが入ってきて。それで「あ、私もう辞め時や」と思って。やろうと思ったら全然50でも60でも私のスタイルやったらできるけど、やめて会社を大きくしようと、なんでも吸収しようと思ってん。あと辞めると思ってなかった私が引退することで、残ってるおばさんたちが危機感おぼえへんかなって。
桜花 でもおぼえなかったですね。
二上 全く無駄死にでしたね。私は
プロレスを辞めないみたいなイメージだったと思うんですよ、それで昔の本とか読み返したら「生涯現役です」とか言ってるんですよ、何言っとんねん、コイツみたいな。しかも何の節目もない24周年でやめてるし(笑)。
桜花 でも、最初は二人で団体ってことに周りからすごいバッシング受けましたね。何二人で団体って、すごい馬鹿にされて。それで絶対見返してやるって思いました。
ニ上 団体の定義に全部はまらんかったんやね。そのとき団体やってる人たちのね。道場もない、二人しかいてない、後楽園ホールできない、株式会社ではない、とかいっぱいあったけど、あれから道場以外は全部クリアしたから。これは10周年の成果ですね。
桜花 でもいま、たぶん所属の選手はいちばん多いと思いますよ、一番か二番か…。あのころは二人で馬鹿にされたのにいまは二人とか普通にありますからね。
二上 そうそう、奈七永とか一人で旗揚げしてるからね。
――それまでにWAVEがいろんな前例を作ってきたんですよね。
二上 うちがパイオニアで成功例だったからね、それで、私は引退しても業界に残って業界のことをやってる初めての人やないですか。女子プロレスラーは辞めたら結婚はいいけど、やることないから飲み屋やりますっていうのはすごい嫌。やることないからプロレスに帰ってきましたというのはすごく嫌だから。そういうのを変えたいんですよ。
桜花 プロレス以外できますからね。
――会社経営者ですからね。
ニ上 職業欄も会社経営者やもんな。私ウイキペディアに日本の実業家って出てるよ。
――自分で書いたんじゃないでしょうね(笑)。
二上 ないない(笑)。
桜花 私は会社役員って書いてます。
――桜花さんも旗揚げしたころは自分が会社役員となるというのは想像できました?
桜花 してなかったですよねー。私はこんなにプロレス続けようと思ってなかったですからねー。30くらいで辞めようかなって。
二上 もうすぐ40やな。
――以前よく結婚したみたいなことを言ってましたがその気持ちに変わりはありませんか?
桜花 結婚したいんです、でももうあきらめてるんです。
二上 あきらめてんの? 私あきらめてへんでー。全然。
桜花 でも、一人で生きていけるかな、どうしようかなみたいな。
ニ上 一人で生きていけるけど、結婚一回してみたいやん。
桜花 そうそう、一回でいいから。子供ほしいんです。
――大田区の最後に結婚発表とかだったらドラマチックですよねー。
桜花 私が言ったらね。
二上 いや、あたいやろ。
桜花 最後に私が「結婚します」って言ったら、それでパーン!みたいなエンディングで。
――ああ、もうエンディングも出来上がってるんですね(笑)。
桜花 JWPの美兎が結婚発表した時に私OZで北海道にいたんですけど、控室がざわつきましたからね。みんなやっぱり結婚って文字が。女の子はみんなこだわりがあるので。
――では婚活に頑張っていただき、大田区ではエンディングの結婚発表というサプライズがあるかも(笑)。
桜花 でも最後は成功させて泣きたい!
二上 また泣きばばあやん。、
――5周年のときは入場式でお二人とも、うるっと来てましたよね。
ニ上 あのときはちょっと来ましたね。だってあれだけ最初バカにされたもん。
――そういう思いだったんですね。では10周年はお二人のうれし涙で終わることを期待します!